公開日:2020年12月16日
クリスマス関連CMから見る、日本と欧米での動画広告の違い
12月も半ばとなり、クリスマスが近づいてきました。
街中にはイルミネーションが輝きはじめ、外を歩いているだけで嬉しくなってしまいますよね。
テレビでもクリスマスソングやクリスマスをコンセプトとしたCMが流れていて、家でも外でもクリスマスムードが高まっています。
今回は日本と欧米の動画広告の違いをクリスマスの広告から見ていきたいと思います。
クリスマスから見る日本と欧米の動画広告の違い
まず、そもそも日本と欧米のクリスマスの違いはどんなところにあるのでしょうか。
日本 | クリスマスはデートや友人と集まったり、家族ででかけたりとイベント性が強く、外で過ごすことも多い。 |
欧米 | 宗教的な性質が大きく、お店に出かける、というよりも自宅で家族と過ごすことが一般的。 |
欧米と日本ではクリスマスの文化はこのようにそもそも考えられている認識が違います。
では、動画広告では日本と欧米でどんな部分が異なっているのでしょうか。
クリスマスの動画広告-欧米編-
日本と欧米によって同じ商品でもバージョンを変えている動画広告もありますので紹介させていただきます。
コカ・コーラ
コカ・コーラはアメリカに本社がありますが、イエス・キリストの生誕を祝う日が起源となっていることもあり、キリスト教を信仰している人口が多いアメリカでは、クリスマスは1年を通して最も特別な祝日のひとつです。
日本では、クリスマスといえば「恋人と一緒に過ごす日」というイメージですが、アメリカでは、「家族で過ごす日」とされています。
まずは、そんな家族のクリスマスを描いたCMをご覧ください。
こちらはコカ・コーラが2020年のクリスマスCMをYouTubeに公開したもので、12月現在再生回数が約500万回を超えています。
このCMを監督したのは映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」や「ジョジョ・ラビット」などの人気作を世に送り出したタイカ・ワイティティ監督です。
この時点でこのCMにかける本気度が伝わってきますよね。
2分30秒とCMにしては長いですが、内容を見るとCMとは思えないまるで映画のようなスケールとクオリティとなっています。
大きなクジラ、漂流、ジャングル…などなど、どこか現実感のない壮大な冒険を描いた映像は、クリスマスの主役であるといえる子ども心にもわくわくするストーリーですね。
ラストの娘の手紙の内容に、父娘の絆や愛を感じさせられます。
アメリカや欧米諸国の方々はこのCMを見て、家族と過ごすクリスマスを思い浮かべているのかもしれませんね。
全編を通してセリフがないので、欧米だけではなくどんな国の人でも理解できるように作られています。
ちなみに、こちらは欧米版ですが、コカ・コーラ公式サイトでは、日本向けにBGMや尺を調整したものが公開されていますので、そちらもぜひご覧ください!
ジョン・ルイス
ジョン・ルイスはイギリスの中流向け大手百貨店です。
毎年クリスマス前に発表されているこのシリーズは2009年から続いていて、イギリスでは毎年このCMを楽しみにしているファンもいるそうです。
先程紹介したコカ・コーラのCMと同じく、尺は2分と長編ドラマ仕立てのCMとなっています。
実はこのクリスマスをコンセプトとした長編CMは、ジョン・ルイスが先駆けと言われており、広告業界でも高い評価を受けています。
今回紹介したCMは、タイトルに「Give A Little Love」とあるように、周りの人に愛を与えていくような内容になっています。
いたるところにハートのモチーフがちりばめられており、言葉がなくてもわかりやすく「Give A Little Love」のメッセージを読み取ることができます。
実写の映像とアニメーションが混ざりあい、現実がファンタジーの世界に広がっていくような不思議な感覚になりますね。
企業のCMとは感じさせないジョン・ルイスのCMですが、話題性や顧客の反応から見てもブランドのイメージアップに大きく貢献しています。
イメージアップだけではなく、CMとの連動キャンペーンにも力を入れており、Youtubeの概要欄の公式サイトではCMをコンセプトとしたグッズなどが売られていたり、
インスタグラムのハッシュタグでSNSへの拡散を促していたり、ただ単に「質のよい長編物語」だけで終わらせない手法が使われています。
キリスト教圏ではクリスマスは商業的ではなく宗教的なもの、とご紹介しましたが、それでもやはり経済効果としてはかなり大きく、
イギリスではデパートのクリスマスシーズンの売り上げは年間の4分の1に達するそうで、ジョン・ルイスはクリスマス時期の売上をここ数年伸ばしているようなので広告として大成功しているといえるでしょう。
クリスマスの動画広告-日本編-
日本ではクリスマスは外国から輸入した文化であり、キリスト教圏のように宗教的な意味合いではなく、どちらかというと商業的なイベントとして発展してきました。
そうした理由からSALEの紹介等に寄る傾向にあるため、紹介した2つの動画のような長編ムービーなどはなかなかありませんが、少し変わったおもしろいクリスマスCMをご紹介します。
無印良品
こちらは「音」を使った作品で、井の頭恩賜公園開園100周年を記念して制作され映画『PARKS』音楽監修を務めたトクマルシューゴさんが音楽制作に参加しています。
無印良品の商品でクリスマスソングを演奏している様子が素朴でシンプルな雰囲気でまとめられています。
商品を使って演奏することで、演出としての工夫はもちろん、商品を見てもらうという販促としての目的もクリアすることができています。
映像に赤や緑といったクリスマスカラーを使わず、楽曲以外でクリスマスを表現する要素はほぼありませんが、それが却って無印良品の「らしさ」を体現するCMになっていると思います。